ラブ・バッグシリーズ(1968〜77年・米)

ラブ・バッグ(1968年・米)原題:The Love Bug

落ち目のレーサー、ジム・ダグラスが意思を持ったフォルクスワーゲンの「ハービー」と出会い、レースで連戦連勝を続ける・・・。実写のカースタントはあまりなく、ウィリーをするなど派手なシーンはコマ落としや合成技術を使ってアニメ的に表現するところがディズニーらしいです。ストーリーは敵役の卑怯な妨害もあり、ヒロインとのラブロマンスもありと良くも悪くも一昔前のレースコメディの典型です。

舞台はサンフランシスコで、有名なロンバートストリートの坂道を軽快に降っていくシーンが印象的でした。


続ラブ・バッグ(1973年・米)原題:Herbie Rides Again

キャストを総入れ替えした本作ではハービーはレースを引退したポンコツ車という扱いになり、車映画としては物足りない内容になっています。大型スーパーの建設を画策する不動産業者からどうやっておばあちゃんの家を救うか?・・・というストーリーに、人気者のハービーを無理やり割り込ませた印象でいささかバランスの悪い作りになっています。合成が多用され、ハービーがゴールデンゲートブリッジや高層ビルに登るなどファンタジー感は増していますが、リアルなカーアクションはほとんどありません。

ラブ・バッグ モンテカルロ大爆走(1977年) 原題:Herbie Goes To Monte Carlo

シリーズ3作中で私のイチオシはコレ!

第1作の主人公ジム・ダグラスが再登場し、ダイヤモンド盗難事件に巻き込まれながらもフランス縦断レースに出場します。エッフェル塔からスタートし、パリの街中から田園地帯をぬけ、アルプスの山越えを経てモンテカルロへと観光映画的な楽しさもあり、登場する車種もヒロインの愛車、ランチアベータモンテカルロ、ライバルレーサーのポルシェ917(のレプリカ)の他にも背景としてチラリと写る程度ですが、デ・トマソ・パンテーラ、フェラーリデイトナ、ロータスエラン、ポルシェ911、フェアレディZ、ランチアストラトスと私好みの車が続々と登場します。

スタート地点のエッフェル塔に参加車が集合。

予選レースでカワイイ車を見つけたハービーは興奮します。ハービーは今回4回ほどウィリーを披露しますが、全て機械的な仕掛けを使った特撮で合成ではありません。

今回、ハービーのガールフレンドになる「ランチア ベータ モンテカルロ」。車名に「モンテカルロ」が入っているのもなんだかベタベタでイイ!。ヘッドライトが変なリトラクタブルに改造されているのはウィンクをする演技があるからでしょう。

公園で戯れるハービーとランチア。「まてよ〜❤️」「うふふふふふ❤️捕まえてごらんなさい❤️」というシュールなシーン。よくみるとランチアは髪飾りの花をつけています。

レース本戦がスタート!各車は凱旋門の前を通ってパリの街中へ。

ライバルのポルシェ917(モドキ)とデ・トマソ・パンテーラ。

定番の土管くぐり。敵役のベンツが後に続いて・・・結果は言うまでもありませんね(^_^;)

アルプス越えをしてモンテカルロの街中へ。有名なロウズヘヤピンでタイヤを滑らせてコーナリングをするフォルクスワーゲンとポルシェ917(モドキ)。

レース終了後にヘンな日本人がチラリと登場。メガネに出っ歯にスーツ姿で写真を撮りまくる。77年にしてまだこの日本人ギャグが生きていたのですね(^_^;)。

レース映画として改めて作り直そうとがんばったのか、第1〜2作と比べるとカースタントが充実していて、特にゴールのモンテカルロ市街地コースでライバルのポルシェ917とデットヒートを繰り広げるシーンはかなり燃えます。コマ落としを使っているのではないかと思いますが、アニメっぽい合成シーンに比べれば100倍マシです。唯一残念なのが、前作までは16:9のビスタサイズで撮影されていたのに、この作品だけは4:3のスタンダードサイズになっていることです。

この3作の後、1980年製作の「ビバ!ラブ・バッグ」という4作目があるそうですが、なぜかDVDセットには入っていませんでした。そして、2005年には「ハービー 機械じかけのキューピッド」がリメイクされましたが、これも未見なのでそのうち見てみるつもりです。

新・おしゃれ泥棒(1974年・英)原題:11 Harrowhouse

邦題は「新・おしゃれ泥棒」とありますがオードリー・ヘップバーンの「おしゃれ泥棒」とは全くの無関係。人気作品のパクリ的邦題は昔の(今も?)配給会社がよくやる手法ですが内容的には結構あっています。

私の目当てはストーリーよりもカーアクション!キャンディス・バーゲンの登場シーン。対向車をよけて道路を飛び出したディノ246GTSがスピンターンを決めます。

依頼人の大富豪の屋敷にはホーカーハリケーンが・・・。

特に活躍はしませんが、敵役の車としてシトロエンDSも登場します。

なんと!掃除機で吸い込んで宝石を強奪します!ルパン三世の元ネタはこれだったのか・・・と思いましたが、この作品は74年で、ルパン三世テレビシリーズが71年〜72年。まさか日本のアニメを模倣したとも思えないのでさらに古い作品にルーツがあるのか?

クライマックス。富豪夫人が夫を裏切って主人公たちを助けるためにロータスヨーロッパで出動!加速時にはフロントが上がり気味になってミッドシップ車の重量バランスが後ろの方にあるのがわかります。

富豪の部下がジャガーで主人公たちを追跡します。この富豪はもともと主人公の依頼人だったのにいつの間にか敵役になっていますが、どうしてそういうことになったのかイマイチはっきりしないところがこの映画の問題点・・・。

ロータスもここでスピンターンを決めます!

ウヒー!かっちょいい〜!

「ガッツ!」「しまった!スタビライザーを打ったか⁈」・・・とはなりません。

工事中の土管が道を塞ぎますが、ロータスは車高の低さを活かして見事にくぐり抜けます。

敵役のジャガーも後に続きますが・・・

もちろんこうなります・・・ちゃんちゃん♩

「ミニミニ大作戦(1969年)」やアメリカ映画のように派手なクラッシュシーンはないものの、ちゃんと車に見せ場が用意されているところに作り手のやる気が感じられます。ほとんど評価されていない作品ですが、欧州車のカーアクションは珍しいので、私にとっては大切な映画の一つになっています。

単なるアクション映画ですから、ストーリーが多少グダグダでも構わないのですが、見ていて眠くなるのはキャラがたっていないからでしょう。主人公は地味で特徴がないし、ヒロインのキャンディス・バーゲンは確かに美人ですが妙にゴツゴツしていて色気も可愛げもありません。

この作品の批判意見に「主人公のモノローグが延々と流れて映画的ではない」というのを見てふと思いつきましたが、これって「涼宮ハルヒの憂鬱」でやればいいのではないでしょうか?優柔不断なキョンがワガママ女のハルヒに振り回され、右往左往しながら宝石強盗をする・・・うん、これならかなり楽しい作品になりそうです。

ミニミニ大作戦(2003年・米、仏、英)原題:The Italian Job

模型製作のモチベーションを上げるために、カーアクション映画をいくつか再見。これは1969年制作のオリジナル版。低予算でありながら、車表現にこれでもかとこだわりを見せた名作。登場する車もミニをはじめ、アルファロメオジュリエッタ、ランボルギーニミウラ、アストンマーチンDB4、ジャガーEタイプ等、往年の名車が次々と登場し、次々と壊されていくというウヒャウヒャな展開。(^O^)

2003年版がネット配信されていたので、この機会に続けて鑑賞。「BMWミニ」が主役ということで今まであまり食指が動かなかったのですがが、それよりもこの映画の致命的な問題点は車が主役ではないということ。

冒頭シーン。ヴェネツィアの運河での船のアクションが延々続いて、「・・・え、ヴェネツィア?カーアクションじゃないじゃん・・・見る映画、間違えたの?(・・?)」となりました。

ようやく過去の因縁話が終わって、ヒロインのシャーリーズ・セロンが運転する旧ミニがようやく登場。「おお、ここで旧ミニがキビキビと走る姿を見せてリスペクトを表すのだな!(^O^)」と期待。

わずかな駐車スペースを発見。「お、ここでスピンターンでぴたりと駐車して、ミニのすごさやかわいさを見せるのだな!」・・・と思いきや・・・。

ハンドル操作をするシーンからカットを割っていつの間にか停車しているミニ・・・。「え・・・Σ( ̄。 ̄ノ)ノ・・・こ、これは自主制作映画なのか?」このあたりから制作者が車をかっこよく見せる気がないことがわかって真面目に見る気が失せました。

一応最後まで見ましたが、予想した通り制作者たちは車に対する特別なこだわりも愛情もなく、腕のあるドライバーによって車が信じられない動きをするシーンを期待する私にとっては全く見どころがない作品でした。現在の映画制作環境では昔のような乱暴なカースタントは不可能になっているのでしょうが「それならこんな題材を選ぶな!」と言いたいです。

ネットで好意的な意見の人は概ね、マーク・ウォールバーグ、シャーリーズ・セロン、ジェイソン・ステイサムといった俳優陣が豪華で良かったというもの。さらにいうとオリジナルがあることを知らなかった人も多数。なるほど、そういう人たちに向けて作られた映画だったのね・・・。それならそれで構わないのですが、カーアクション映画のお勧めに挙げられているのを見て「それはじぇんじぇん違うぞ!」と言いたくてこの小文を書いたという次第です。

カーアクション映画好きの人にはオリジナルの「ミニミニ大作戦」こそお勧めします。古い映画なので前半は退屈に思えるかもしれませんが、そんな人は思い切って最後のクライマックスシーンだけを見てもかまいません。要するに金塊を奪ってミニで逃走するだけの話ですから。この逃走場面こそが映画のキモで、俳優の出番もほとんどなく延々と「ミニが演技をする」姿を見てもらいたいものです。