No.76 タメオ 1/43 ティレル019(1990年モナコGP)

2024年9月完成

ベネトンB186とセットでご注文いただいたティレル019です。

60年代〜70年代にかけて大活躍したティレルチームは80年代に入ると強力なエンジンやスポンサーの獲得に恵まれずパッとしない時期が続きました。しかし、ハーベイ・ポスルスウェイト設計の018から戦闘力を取り戻し、019は空力設計担当のジャン=クロード・ミジョーのアイディアによるハイノーズデザインと中嶋悟のドライビングで注目を集めました。

ネットでよく「タイレルは間違い、ティレルが正しい」という発言を見ますが、映画『ブレードランナー』やGoggles翻訳では「タイレル」と発音しているところから単にアメリカ英語とイギリス英語の違いのようで、第二次F1ブームの頃から「ティレル」に変わったようです。個人的には001〜008までを「タイレル」、009以降を「ティレル」と呼んでいます。

019を初めて見た時、サイドのホワイトの部分がスカスカなのを不思議に感じました。実はメインスポンサーが「Rothmans」になる予定でデザインを決めたのですが、それが中止になったためこんな中途半端なカラーリングになったそうです。

80年代に入って空力の研究が進み、かつては剥き出しになっていたダンパーなどもボディに内蔵されて足回りがスッキリしています。さらに019はフロントサスがシングルタイプなのでノーズが非常に細くなっています。

019のセールスポイント、「ドルフィンノーズ」と「アンヘドラル(下反角)ウィング」。ミジョーのデザインではベネトンB192のような左右2本のピラーで一枚のウィングを吊り下げる方式でしたが、ポスルスウェイトが「格好悪い」と言ったためこの形式に落ち着いたそうです。

製作記録

今回もタメオのキットですが、ベネトンB186と比べるとかなり初期のものなので、パーツは少なめでパーティングラインのズレや表面の荒れが目立ちます。ウィングがついていないせいかもしれませんが、パーツ単体で見るとノーズが妙に太く見えます。

キットレビュー

メタルパーツ一覧

メタルパーツは全25点。タメオの初期のキットなのでエンジレスのシンプルな構成で説明書も白黒の簡潔なものです。

エッチングパーツなど

エッチングパーツはウィング用の薄いものと足回り用の厚いものの2種類が付属。

デカール

なぜか1セットしか付属しません。白の部分はデカールをそのまま使うか、マスキング塗装にするか検討中。

組み立て

ホイール

リムの精度が低くてスポーク部がスムーズに収まらないのですり合わせが必要。真鍮削りだしのものもあるようですが、このキットにはホワイトメタル製のものが付属します。

ギヤボックス

内部パーツはギヤボックス後部のみですが、ここが干渉してカウルがきちんと閉まらないので上下を削ってすり合わせをしました。

アンテナ

エッチング製のアンテナ(ピトー管?)は妙に太くてボッテリしているので、真鍮線などに交換したほうが良さそうです。

フロントウィング

エッチングパーツの翼端版は平板な形状なので、後部はタイヤの形に沿うように内側に曲げる必要があります。

仮組み完了

パーツ構成はBBRのマクラーレンと似たようなものですが、エッチングパーツがポキポキ折れるようなこともなく足回りやウィングの水平もきちんと出ました。

分解

アセトンに漬け込んでパーツを分解。仮組みには瞬間接着剤を使用していますが、このように簡単に分解できるのがメタルキットの利点です。

ボディ・ウィング組み立て

改めてパーツをキチンと接着し、フロントウィングの翼端版の曲線出し。ヤスリとポリッシャーで表面をピカピカに磨きます。

シャーシ組み立て

シャーシの方も細かいパーツを接着。ベースにネジ止めするため3mmナットを黒い接着剤で固定。さらに回転防止のため2mm真鍮線を埋め込みました。

シートベルト①

このキットにはシートベルトが付属しないので、別売のエッチングパーツを使用します。後期のキットに標準で付属しているものと基本的に同じものです。

シートベルト②

真鍮製のエッチングパーツを切り出してライターであぶって焼きなまし。シートの形状に合わせて曲線をつけます。

塗装

下地塗装

今回のキットは表面にピンホールなどが目立つので、プライマーサーフェイサー使用して細かいキズをチェックします。

本塗装①

フィニッシャーズのファンデーションホワイトで全体を塗装。デカールをコピーしたものを型紙にしてマスキングシートを作成しました。

本塗装②

青部分はフィニッシャーズのピュアブルーで塗装。マスキングもまずまずうまく行きました。

デカール貼り

結局ホワイト部分は塗装で処理したので、塗り分けラインのシルバーのみ使用しました。

シャーシ・足回り塗装

シャーシ、ホイール、サスペンションなどは全てセミグロスブラックで塗装。細かい部分はエナメル塗料で筆塗りをします。

シャーシ完成

コクピット、リアサスを取り付けてシャーシ側は完成。

足回り組み立て

ボディの研ぎ出しと磨きが完了したので、シャーシと合体させてサスアームを組み立て。微調整をしながら組む必要があるのでエポキシ接着剤を使いました。

タイヤ接着

サスアームの組み立てが完了したら、次はホイールを接着。水平、垂直がきちんと出るように真鍮ブロックで固定します。

リアウィング接着

同じようにリアウィングを接着。やはり真鍮ブロック固定します。

小物接着

ミラー、ヘッドレスト、アンテナなどの小物を接着。ヘッドレストはキットのパーツは四角形ですが、資料を見ると円形が正解のようなので、プラ板を切り抜いて自作しました。

No.75 タメオ 1/43 ベネトンB186(1986年メキシコGP)

2024年8月完成

次のご依頼は1/43のF1メタルキット、ベネトンB186 メキシコGP仕様(ゲルハルト・ベルガー優勝車)です。

F1でスポンサー活動をしていたイタリアのアパレルメーカー「ベネトン」がトールマンチームを買収し、1986年に「ベネトン・フォーミュラ」として参戦を始めた最初のマシンがこのB186です。トールマン時代から引き続きロリー・バーンが設計を手がけ、マシンデザインはTG185の流れをくむものですが、BMW直4ターボエンジンにスイッチしたことで予選1400馬力、決勝900馬力という強烈なパワーを手に入れました。

今回のご依頼品はタメオの比較的新しいキットなので、ヘタなプラモデルよりも安心して製作できました。

アパレルメーカーのチームとあってド派手なグラフィックです。翌年のB187からは一般的な塗り分けに変わりましたが、これは評判が悪かったのでしょうか?

F1では珍しい直列4気筒エンジンを積んでいるためインテークは左側のみ。冷却上の問題があったのかメキシコGP仕様では右サイドポンツーンのパネルが外されていてエンジン部がチラリと見えます。

製作記録

キットレビュー

メタルパーツ一覧

パーツ数は約130点。1/20キット並みの精密さですが、今回はプロポーションモデルとして製作しますので、見えない部分の組み立てや塗装は極力省略します。

エッチングパーツ、その他

新品キットなのでパーツはピカピカです。この前のBBRのキットはタイヤやエッチングパーツの劣化がありましたが、これは大丈夫のようです。

デカール

海外製ガレージキットでは割と普通ですが、デカールは2セット付属。国産キットでもグラフィックの多いキットでは見習ってもらいたいところです。

組み立て説明書

タメオの後期のキットはフルカラーの説明書がついています。この辺りもヘタなプラモデルよりよほどしっかりしています。

ネームプレート

エッチング製のネームプレートとデカールが付属。今回はメキシコGPで優勝したG・ベルガー車として製作します。

仮組み

脱脂作業

パーツを30分ほどアセトンに漬け置きをして脱脂作業。キツい溶剤を使っても侵される心配がないのがメタルキットのいい点です。

ディスプレイベース

ロムの1/43アクリルケースホワイトベースを使用。シャーシ側に3mmナットを黒い接着剤で固定。スペーサーはキット付属のものを使用します。

エンジン周り組み立て

カウルを脱着して鑑賞できるようにM12/13エンジンが精密に再現されています。足回りは若干すり合わせが必要です。

仮組み

ボディに前後ウィングと足回りをつけてバランスを確認。特に調整しなくても四輪ともキチンと設置しました。

サイドカウル

80年代のマシンなので、当然フルカバーカウルだと思っていましたが、なんと右サイドのカウルが外されています!資料がなくてよくわかりませんがメキシコGPだけの特別仕様のようです。

塗装

下地塗装

マルチプライマーを吹いてから、ファンデーショングレイで下地塗装。細かいキズをチェックしてから本塗装に入ります。

塗装①

フィニッシャーズのピュアホワイトで塗装してからマスキング。

塗装②

緑の部分はフィニッシャーズのピュアグリーンで塗装。

シャーシ塗装

シャーシ、前後ウィングはセミグロスブラックで塗装します。

デカール貼り

ボディと前後ウィングにデカール貼り。デカールは質の良いものでシワもワレもなくキレイに貼れました。アパレルメーカーのチームとあって後部のグラフィックが実にハデです。

コクピット

シート、ステアリングホイール等を塗装。シートベルトはキット付属のエッチングパーツを使用しました。

シャーシ側完成

シャーシにエンジン、コクピットを接着、サイドポンツーンの右側は外から見えるので、内部パーツも組み立て、塗装しました。

ボディ完成

ボディにウレタンクリアを吹いて、1000番〜3000番のヤスリで研ぎ出しをしてコンパウンドで磨いて完成。あとは各パーツを組み立てるだけです。

最終組み立て

フロントサス完成

サスアームの取り付け位置が決まったら、プッシュロッド、タイロッドを取り付けてフロントサスは完成です。

足回り組み立て

エポキシ接着剤で足回りを接着。水平、垂直が正確に出るように接着剤が完全硬化するまで真鍮ブロックで固定します。

ウィング組み立て

エポキシ接着剤でウィングを接着。足回りと同じように真鍮ブロックで固定します。

細部組み立て

コクピット周り細部組み立て。シールドは極薄の透明シートを切り抜いて丸みをつけてから接着するようになっていて、この作業だけで三日もかかってしまいました。